先日、身近な家族が目の手術を受けました。
手術をお願いしたのは、Best Doctors in Japanにも選出されている先生でした。もちろん、それも安心材料の一つでしたが、先生を選ぶ時に私が強く見ていたものが、もう一つあります。
症例数です。
これまでに、どのくらいこの手術をしてきたのか。何度も同じような症例を見て、何度も判断し、何度も手を動かしてきたのか。
手術ですから、経験のある先生にお願いしたいと思うのは自然なことだと思います。
外科の世界では、術者の症例数と手術成績との関連について、さまざまな研究が行われています。もちろん、「症例数が多ければ、それだけでよい医師である」という単純な話ではありません。
それでも、経験の量が技術や判断に影響するということには、納得できるものがあります。
練習してから、本番に向かう
医療の世界では、いきなり患者さんを前にして、初めてのことを試すわけではありません。
シミュレーションを使った訓練を行い、繰り返し手技を練習する。医学教育でも、シミュレーションと意図的な反復練習を組み合わせることが、臨床技能の習得につながることが知られています。
練習して、実際に経験して、振り返る。そして、もう一度やってみる。
そこには「量」があります。
このことを考えていて、仕事や人生にも、どこか似たところがあるのかもしれないなと思いました。
目的と行動の間にあるもの
私たちは何かを実現したい時、「目的」と「行動」を考えることが多いように思います。
売上を上げたい。独立したい。人前で話せるようになりたい。新しい仕事を始めたい。
目的を決めたら、「では、何をするのか」と行動を考える。もちろん、それは大切です。
でも、目的と行動の間には、もう一つあってもいいのだと思います。
それが、「練習」です。
まず一度、やってみる
たとえば、営業ができるようになりたいと思った時。
いきなり大きな商談を成功させようとするのではなく、まず一人に提案してみる。
実際にやってみると、伝わったところと、伝わらなかったところが見えてきます。少し変えて、また一人に提案してみる。その繰り返しの中で、自分なりの伝え方が少しずつ見えてきます。
人前で話せるようになりたい時も同じです。
いきなり大勢の前で完璧に話そうとするのではなく、まず少人数の前で話してみる。
実際に話してみると、「ここは伝わった」「ここは少し長かった」「思っていたより緊張した」「相手の反応を見る余裕がなかった」といったことが分かります。
こうしたことは、頭の中で準備しているだけでは、なかなか見えてきません。
一度やってみるからこそ、次に何を練習すればいいのかが分かります。
量の中で、余裕が生まれる
一度できたら、それで終わりでもありません。
二度、三度と繰り返していく。その量の中で、少しずつ余裕が生まれてきます。
最初は手順を追うだけで精一杯だったことが、だんだん周りを見ながらできるようになる。相手の反応を見る余裕が生まれる。予定外のことが起きても、少し落ち着いて判断できるようになる。
知識が増えただけではなく、経験が少しずつ身体に入ってくる。
そんな感覚に近いのかもしれません。
だから、練習も大切。そして、量も大切なのだと思います。
ただ回数を増やせばいいわけではない
ここでいう「量」は、やみくもに回数を増やすという意味ではありません。
やってみる。振り返る。少し変える。またやってみる。
その繰り返しです。
医療のシミュレーションでも、ただ同じことを反復するだけではなく、フィードバックを受け、修正し、もう一度試すことが大切にされています。
何かが思うようにできない時、それをすぐに能力や適性の問題にするのではなく、
まだ練習の途中なのかもしれない。
まだ経験の量を重ねている途中なのかもしれない。
そんな見方もできるように思います。
すると、少し見え方が変わります。
遠く見えるものを、現実に近づける
目的を決めたら、すぐに本番だけを見なくてもいい。
その間に、どんな練習ができるだろう、と考えてみる。
そして、一度やってみる。振り返って、またやってみる。
目的と行動の間には、練習がある。
その時間を飛ばさないことが、遠く見えていたものを、少しずつ現実にしていくのかもしれません。
