あなたの周りに、コーチをつけている人はいますか。スポーツ選手でも、芸術家でも、ビジネスパーソンでも構いません。少し、思い浮かべてみてください。

そうした人たちには、どんな共通点があるでしょうか。

私は、その一つが「すでに自分の分野で力を発揮している人たち」であることだと思っています。例えば、プロのスポーツ選手。すでに高い技術を持ち、自分で考え、判断し、行動できる人たちです。それでも、コーチをつけています。

なぜでしょうか。

私は、ここにコーチングの本質があると思っています。

まだ知らないことや技術を身につけたいときには、先生から学ぶことが役に立ちます。一方、コーチの役割は少し違います。

私は、コーチとは、その人の変化や成長を促す「触媒」のような存在だと考えています。対話を通じて視点が変わり、新しい可能性や選択肢が見えてくる。そして、自分自身で考え、決め、行動していく。変化を起こすのは、あくまでも本人です。

だからこそ、何かができないからコーチをつけるのではありません。できるからこそ、コーチをつける。

自分の力をさらに活かし、より高いところを目指していく。私は、そこにコーチングの大きな価値があると思っています。

一人でも進める。だからこそ、伴走者を持つ

自分で考え、行動できる人は、一人でも前に進むことができます。ただ、日常にはいろいろなことが起こります。仕事が忙しくなったり、思いがけない出来事が重なったり。大切にしたいと思っていたことが、いつの間にか後回しになることもあります。

私は、伴走者を持つ価値の一つは、コンスタントに、ムラなく進めることだと思っています。

毎回、大きな成果を出す必要はありません。順調なときも、思うように進まなかったときも、定期的に立ち止まり、これまでの行動を振り返る。その機会があることで、一時的な意欲や状況に左右されすぎず、大切なことに取り組み続けやすくなります。

一人でも進める人が、より安定して、自分の望む方向へ進んでいく。そこに、伴走する意味があるのだと思います。

アカウンタビリティという関係性

コーチングには、アカウンタビリティ(説明責任)という考え方があります。

説明責任というと、誰かに報告したり、評価されたりすることを想像するかもしれません。しかし、ここで大切にしているのは、そうした義務ではありません。自分が取り組むと決めたことについて、次の対話で振り返る機会を持つことです。

実際に行動したのかどうか。行動して、何を感じたのか。そこから、どんな学びがあったのか。そして、その学びを自分の生活や仕事にどう活かしていくのか。

ここまで振り返ることで、一つの経験が、次の選択につながっていきます。

思うように進まなかったことも、行動に移さなかったことも、大切な振り返りの材料です。何が起きていたのか。そこから何が見えてきたのか。次は、どんな選択をしたいのか。こうしたことを、伴走者との対話の中で確かめていきます。

次に会ったときに、自分の経験を話す相手がいる。その関係性が、日常の中での行動を支えてくれることがあります。

私は、アカウンタビリティには、行動を継続する力と、経験を自分の学びに変える力の両方があると考えています。

40代からの時間の使い方

私は、特に40代以降の方にとって、伴走者を持つ意義は大きいと感じています。

年齢を重ねることで、仕事や家族、社会の中での役割が変わり、これからの時間をどのように使いたいのかを考える機会も増えてきます。

もちろん、何歳になっても新しいことに挑戦できますし、やり直すこともできます。ただ、何度も同じところを行き来するより、一つひとつの経験から学び、次につなげていきたい。そう考える方も多いのではないでしょうか。

伴走者との対話によって、物事を見る視点が変わり、迷ったときには自分の現在地を言語化することができます。そして、今の状況を違う角度から捉え直すことで、次に進むための具体的な戦略が見えてくることもあります。

試行錯誤をなくすのではなく、その質を高めていく。単に速く進むのではなく、自分がどこに向かい、何に力を注ぐのかを明確にしていく。

人生の時間を大切にするとは、そういうことでもあると思います。

自分のフォーカスを見失わずに進む

コーチは、本人に代わって答えを出す人ではありません。対話を通じて、新しい視点や選択肢が生まれる。その変化の触媒となる存在です。

対話の中で生まれた気づきを日常に持ち帰り、実際に行動してみる。そこで感じたことや学んだことを次の対話に持ち寄り、また新しい選択をしていく。

私は、コーチングの時間に何を話したかと同じくらい、その次の時間までに何が起きたのかを大切にしています。

伴走者がいるからといって、すべてが予定どおりに進むわけではありません。立ち止まることも、方向を変えることもあります。

それでも、自分のフォーカスを見失わず、一つひとつの経験を次につなげながら、着実に前進していく。

その歩みを、ともに支えていくこと。

私は、そこに伴走支援の価値があると思っています。