旅に出ると、同じ仕事や日常が、少し違って見えることがあります。

変わったのは、目の前の世界ではありません。

いつもの環境を離れたことで、自分がどんな前提の中で考え、判断していたのかが見えるようになるのです。

私がコーチングでも旅でも大切にしていることについて、セブでの経験を交えながら考えてみます。

なぜ私は、コーチングだけではなく「旅」を大切にするのか

私たちは、毎日さまざまな判断をしています。事業をどの方向へ進めるのか。誰と仕事をするのか。何に時間を使い、何を手放すのか。この先、どのように生きていきたいのか。判断には、知識や経験が必要です。

けれど、それだけで判断の質が決まるわけではありません。同じ出来事でも、どこから見るかによって、見えるものは変わります。

目の前の問題の中に入り込んでいる時には、それがすべてのように感じられることがあります。少し離れたところから見直してみると、それまで気づかなかった前提や、別の選択肢が見えてくることがあります。

私は、コーチングでも旅でも、この「見る位置」を大切にしています。

セブで、自分の見ていた世界を見直した

振り返ると、私の人生が大きく動き始めたきっかけの一つに、セブへの旅がありました。

セブという土地が、私に答えを与えてくれたわけではありません。場所を変えたからといって、それまで抱えていた課題がなくなったわけでもありません。

ただ、いつもの環境を離れたことで、私は初めて日本を外から見ることができました。

日本を外から見ると、日本社会の価値観が見えてきます。社会が見えてくると、自分が所属していた組織も、少し距離を置いて見られるようになります。そして最後に、その組織の中で働いている自分自身も見えてきました。

仕事の進め方、成果の捉え方、人との関わり方、時間の使い方。それまで当たり前だと思っていたことも、絶対ではありません。自分がいた環境の中で身につけてきた、一つの前提だったのです。もちろん、日本が間違っていて、セブが正しいという話ではありません。

外に出ることで、自分がどこから世界を見ていたのかに気づけたことに意味がありました。

人は、環境の中にある前提で考えている

私たちは、自分で考え、自分で判断しているつもりでいます。けれど実際には、知らないうちに環境の中にある価値観や前提を受け入れています。

この会社では、こうするものだ。この業界では、仕方がない。この立場なら、こう振る舞うべきだ。自分は、こういう人間だから。

それらが間違っているわけではないのですが、その環境の中にいる時には、それが一つの見方にすぎないことに気づきにくくなる側面があるように思います。

だからこそ、場所を離れることには意味があります。

コーチングで大切にしていること

コーチングでは、「メタの視点」を大切にします。目の前の問題だけを見るのではなく、少し距離を置いて、その問題を見ている自分にも目を向けます。

自分は、どのような前提で考えているのか。なぜ、その判断をしようとしているのか。何を守ろうとしているのか。見る位置が変わると、問いも変わります。

「どうすれば、この問題を解決できるか。」という問いが、「そもそも、私は何を前提に、この問題を見ているのだろう。」という問いに変わることがあります。

問いが変わると、見える選択肢も変わります。そして、その先の判断もより本質的なものに変わっていきます。

旅にも、似たような効果があります。場所を変えることで、自分が見ている位置に気づき、これまでとは違う問いが生まれていくことがあるからです。

旅のあとに、判断が変わっていく

旅をしただけで、人生が変わるわけではありません。旅は、答えを与えてくれるものでもありません。

それでも、日常から少し距離を置くことで、自分がどのような前提で物事を見ていたのかに気づくことがあります。前提に気づくと、それまで当然だと思っていた選択肢以外も見えてきます。その結果として、帰ってきたあとの判断が変わることがあります。

私は、旅の価値はここにあると思っています。旅は、日常から逃げるためのものではありません。自分が生きている日常を、もう一度見つめ直すための時間です。

遠くへ行く必要はありません。普段は行かない街を歩くことでもいいかもしれません。いつもとは違う場所で朝を迎え、会いたい人に会うために移動することも良い選択肢だと思います。

大切なのは、移動した距離ではなく、今いる場所や、自分自身を、少し離れたところから見られるかどうかです。

旅は、世界を変えるためのものではありません。

世界を見る位置を変える実践なのだと思います。

次回は

次回は、なぜ私は一人で旅をするだけではなく、Travelerという場をつくったのかを書きます。

人生や仕事における「遊び」とは何か。なぜ、仲間とともに旅をするのか。そして、「人生を加速させる遊び場」という言葉に、どのような意味を込めているのか。

Travelerという場をつくった理由について、お伝えします。