なぜ私は、旅を人生の中に置くのか
私は、経営者や個人事業主の方々と対話を重ねながら、その人がどのような仕事をしたいのか、どのような人生を歩みたいのかを一緒に考えてきました。
仕事の方向性を考えることと、人生のあり方を考えることは、別々のものではありません。
人生は地続きです。
だからこそ私は、仕事や事業について考える時にも、その先にある人生を切り離さないことを大切にしています。そんな私が、人生の中で大切にしているものの一つが、旅です。
旅は、何かを成し遂げた人だけが楽しむご褒美ではありません。人生が落ち着いてから始めるものでもありません。
私が旅を大切にしている理由は、とてもシンプルです。
人生には、今しかできないことがある。
そう考えているからです。
人生は地続きです
以前、私は投資家の育成に携わっていました。その中で、投資を学ぶ方々によく尋ねていたことがあります。
「何のために、お金を増やしたいのですか」
返ってくる答えは、お金そのものについてではありませんでした。
家族との時間を増やしたい。
老後は旅行へ行きたい。
引退したら日本を回りたい。
いつか海外にも行ってみたい。
多くの方が、自分の願いを「引退したあと」や「成功したあと」に置いていました。
私は、そんな方々にお伝えしていました。
「成功してから行くのではなく、今、行きましょう」
もちろん、将来だからこそ実現できることもあります。けれど、今できることまで、すべて未来へ先送りする必要はありません。
マイルやホテルの会員プログラムを活用すれば、旅を今の暮らしの中に取り入れることもできます。家族との時間も、仕事を終えたあとに初めて持つものではなく、今の人生の中で少しずつ育んでいくことができます。
何のために投資をするのか。
何のために事業をするのか。
何のために働くのか。
その答えがすでに分かっているのであれば、それを人生の後半まで待たせなくてもよいのではないでしょうか。
仕事と人生は、別々に進んでいるわけではありません。今日という一日も、人生そのものです。
だから私は、人生を豊かにするものを、人生のあとに置くのではなく、今の日常の中にも置いていきたいと考えています。
今という時間には、今だけの価値がある
結婚10周年の節目に、妻とヨーロッパを旅しました。旅の最後には、エルサレムにも滞在しました。
その後、世界の状況は大きく変わり、以前と同じように訪れることは簡単ではなくなりました。
パリでは、ノートルダム大聖堂を訪れました。その後、大きな火災があり、長い時間をかけて修復が行われました。
今も、その場所を訪れることはできます。けれど、あの日見た景色を、もう一度そのまま見ることはできません。
世界は変わります。街も変わります。社会も変わります。そして、私たち自身も変わっていきます。
その時にしか見られない景色があります。
その時にしか感じられない空気があります。
その時にしか歩けない道があります。
「いつか」と思っていたことが、いつまでも同じ形で待っていてくれるとは限りません。
だからこそ私は、今という時間を大切にしたいと思っています。
あの時にしか、つくれない時間がある
私は、両親や親戚を招いて、ホテルステイをしたことがあります。その時は、スイートルームを3部屋予約し、プロのカメラマンにも入っていただいて、家族写真を残しました。
合理性だけを考えれば、やりすぎだったのかもしれません。
でも今振り返ると、あれほど価値の高い投資はありませんでした。
その時のみんなの笑顔や、一緒に撮った写真は、今でも私にとって大切な宝物です。
そして、時が流れました。
人生は変わります。
家族の状況も変わります。
だからこそ、私は「あの時、やっておいて本当に良かった」と心から思っています。
あの時間は、あの時にしかつくれない時間でした。
大切な人と過ごす時間も、いつでも同じようにつくれるわけではありません。
今だから一緒に行ける場所があります。
今だから交わせる会話があります。
今だから残せる記憶があります。
そう考えると、人生における豊かさとは、将来のために蓄えることだけではなく、今ある時間を大切に使うことでもあるのだと思います。
人生には、今しか使えない資産があります。
時間です。
健康です。
そして、大切な人と一緒に過ごせる機会です。
マイルも、ホテルも、本当はそのための道具です。
上級会員になることが目的ではありません。
得をすることが目的でもありません。
人生の大切な瞬間を、少しでも豊かにするための手段です。
だから私は、どうでもいいことを真剣に学びます。どうでもいいことを、どうでもよくないもののために使いたいからです。
人生には、賞味期限がある
私は、人生には賞味期限があると考えています。この言葉だけを聞くと、少し寂しく感じるかもしれません。
けれど、残された時間を数えたいわけではありません。
限りがあるからこそ、今という時間には価値がある。
そういう意味です。
今だから会える人がいます。
今だから伝えられる言葉があります。
今だから挑戦できることがあります。
今だから味わえる人生があります。
賞味期限があることを悲しいと捉えるのか。それとも、その時間の中で味わえるものがあることを、ありがたいと捉えるのか。
私は、後者でありたいと思っています。
旅を、人生の中に置く
旅は、成功した人だけのものではありません。引退した人だけのものでもありません。
何かを成し遂げたあとに、ようやく許されるご褒美でもありません。
人生を豊かにするものは、
人生のあとにあるものではありません。
人生の中にあるものです。
だから私は、旅を人生のあとに置くのではなく、人生の中に置いています。
今だからできることを、大切にするために。
次回予告
次回は、旅によって日常から少し距離を置くことが、なぜ視点や判断の変化につながるのかについて書きます。
