先日、ダイエットの専門家の方と話していて、とても印象に残ったことがありました。
その方は、こんなことを言っていました。
「ダイエットで何をすればいいかは、みんな知っているんです」
食事を整えること。運動すること。睡眠をとること。自分に無理をさせないこと。
今は情報も豊富です。食事についても、運動についても、調べようと思えばいくらでも情報が出てきます。
それでも、何をすればいいかを知っていることと、実際に減量という結果を出すこと、そして結果を出し続けることの間には、大きな差があります。
その方が話していたのは、その差を埋めるうえで大切になるのが、「伴走」があること、そして「プロのパートナー」を持つことだということでした。
結果を分けるのは、知識だけではない
ダイエットは、最初にプランを立てれば終わりではありません。
仕事が忙しくなって、予定していた運動ができなくなることもあります。体重を減らそうとして食事を制限したものの、その人にとってはやり過ぎだったり、極端な方法になっていたりすることもあります。すぐに変化が出なくて、モチベーションが落ちることもあります。
だから大切なのは、最初に正しいプランを立てることだけではないそうです。
そのプランを継続できるのか。間違った行動をしているときに調整できるのか。プランから外れたときに立て直せるのか。そして、結果が出るまでモチベーションを維持できるのか。
その積み重ねが、結果につながっていく。
もう一つ興味深かったのが、パートナーを持つことは、誰かに管理してもらうことではないという話でした。
食べたものを監視してもらう。運動したかどうかをチェックしてもらう。できなければ叱ってもらう。そういうことではありません。
パートナーがいることで、自分が決めたことに対する説明責任が生まれる。
何をすると決めたのか。実際に何をしたのか。どんな変化があったのか。思うような結果が出なかったのであれば、何が起きていたのか。
それを話す相手がいることで、自分で決めたことを、自分の言葉で振り返る機会が生まれます。
そして、説明しようとすると、自分の判断が曖昧なままでは通らないことにも気づきます。
なぜ、そう決めたのか。なぜ、できなかったのか。なぜ、その方法を選んだのか。
言葉にすることで、自分でも見えていなかった前提が見えてくる。
必要なら調整する。プランから外れていたら立て直す。そして、また続ける。
この関係が継続を支え、継続が結果につながっていくのだそうです。
私はこの話を聞きながら、これは経営や仕事も同じだなと思いました。
理念も、計画も、つくったあとからが始まる
経営や仕事についても、知識や情報はたくさんあります。
理念のつくり方も、事業計画の立て方も、マーケティングも、営業も、採用も、組織づくりも、学ぼうと思えばいくらでも学ぶことができます。
ただ、知っていることが、そのまま結果になるわけではありません。
理念も、つくったあとからが始まります。計画も、立てたあとからが始まります。目標も、決めたあとからが始まります。
理念をつくったのであれば、それが日々の判断や行動にどう表れているのか。計画を立てたのであれば、実際に何をしたのか。目標を決めたのであれば、どこまで進み、何が結果として生まれたのか。
実際に動けば、計画を立てたときには見えていなかったことも見えてきます。
思った以上にうまくいくこともあれば、思ったように進まないこともあります。優先順位が変わることもあるし、目の前の仕事に追われて、当初の計画から離れていることもあります。
大切なのは、計画から一度も外れないことではありません。
外れたことに気づき、必要な調整をし、もう一度立て直して進めることです。
経営も、何をすべきか分からないことより、分かっていることを、現実の結果までつなげていくことの方が難しい場面があります。
だからこそ、伴走者という存在に意味が出てきます。
結果だけではなく、何がワークしたのかを見る
私は、結果を見るときに、数字だけを見るわけではありません。
何がワークしたのか。どの判断がよかったのか。そして、どの関係性がワークしたのか。
誰と取り組んだことで前へ進んだのか。誰に任せたことで、その人の力が発揮されたのか。どんな顧客との関係から、新しい価値が生まれたのか。
経営や仕事の結果は、一つの施策だけから生まれるものではありません。人と人との関係性から生まれているものも多くあります。
だから、売上が上がった、下がっただけで終わらせない。
何をしたのか。誰としたのか。何がワークしたのか。なぜ、それが結果につながったのか。
そこまで見ることで、次に生かせるものが見えてきます。
関係性は、精神論ではありません。
結果を生み出す構造の一部です。
誰と組むのか。誰に任せるのか。誰との対話から新しい判断が生まれたのか。
そこを見ることで、その会社が持っている強みや、次に生かせる関係性も見えてきます。
結果は、評価を下すためだけのものではありません。
次の判断をつくるための材料でもあります。
パートナーと取り組む
私は、ICF(国際コーチング連盟)が大切にしている、クライアントとパートナーとして関わるという考え方を大切にしています。
もちろん、コーチングとコンサルティングは異なるものです。ここで両者を同じものとして扱いたいわけではありません。
ただ、相手を一方的に「答えを与える対象」として見るのではなく、ともに取り組むパートナーとして見る。
この姿勢は、伴走型コンサルティングでも大切にしています。
第1回では、伴走するときに第一義的に大切にしているのは、クライアントが見ているものを、私も見ることだと書きました。
今、何が気になっているのか。何に困っているのか。何に引っ掛かっているのか。まず、そこを一緒に見る。
そこから未来を見る。過去を見る。そして、その人が「ここへ行きたい」と思える未来から、現在の計画をつくっていく。
そして実際に動いたあとは、結果を見て、何がワークしたのかを振り返り、必要なら調整し、もう一度進む。
その一連の流れを、パートナーと一緒に見ていきます。
経営者にも、説明する相手がいる
経営者は、組織の中では説明を求める側になることが多いと思います。
「あの件はどうなったのか」「なぜ、この結果になったのか」「次はどうするのか」
社員やチームには、そう問いかけることができます。
では、経営者自身はどうでしょう。
自分が決めたことについて、何をしたのか。なぜしなかったのか。どんな判断をしたのか。何がワークしたのか。次に何を変えるのか。
それを定期的に言葉にする相手は、意外と少ないものです。
私は、伴走者というパートナーを持つ意味の一つは、ここにあると思っています。
経営を管理してもらうためではありません。
自分で決めたことについて説明する相手がいることで、意思決定と行動と結果を、切り離さずに見ることができます。
できたのであれば、なぜできたのかを見る。できなかったのであれば、何が止めていたのかを見る。計画とは違う行動を選んだのであれば、その判断の背景を見る。
そこで新しく分かったことがあれば、計画を変える。関係性がワークしているのであれば、そこを生かす。やり過ぎていることがあれば減らす。力が分散しているのであれば絞る。プランから外れているのであれば、立て直す。
伴走とは、計画を守らせることではありません。
描いた未来と、日々の行動と、そこで生まれる関係性と、現実の結果を結び合わせ続けること。
私は、それが伴走者の大切な役割だと思っています。
自分で決めるからこそ、パートナーを持つ
私は、経営の面白さの一つは、自分で決められることだと思っています。
何をするのか。どこへ向かうのか。誰と取り組むのか。何に時間やお金を使うのか。
自分たちで決めるからこそ、その結果を自分たちで受け取ることができます。そして、生まれた成果を、社員や顧客、取引先、家族や仲間など、関わる人たちと分かち合うこともできます。
だから、伴走者が経営者の代わりに決める必要はありません。
むしろ、自分で決めるからこそ、パートナーを持つ意味があります。
パートナーが経営をするわけではありません。決めるのは経営者です。動くのも経営者です。そして、その結果を受け取るのも経営者です。
だからこそ、自分が決めたことを言葉にし、行動を振り返り、結果から学び、必要なら立て直す。そのプロセスをともにする相手がいることには、大きな意味があります。
最初のダイエットの話に戻れば、何をすればいいかを知っていることと、結果を出し続けることは別のことでした。
経営や仕事でも同じです。
理念を掲げること。未来を描くこと。計画を立てること。どれも大切です。
でも、本当に価値が生まれるのは、それらが行動になり、関係性の中でワークし、結果につながったときです。そして、その結果からまた学び、次の判断につなげていく。
知識や計画を、現実の結果までつなぐ。その間を、パートナーとしてともに見る。
自分で決めたことを、結果につなげていくために、プロのパートナーを持つ。
私たちが現場で求められることが多いのは、まさにこうした伴走型のコンサルティングです。
