コーチングという言葉は、近年さまざまな場面で使われるようになりました。
経営者の伴走支援。
管理職の育成。
キャリアの見直し。
組織開発。
個人の意思決定。
扱われる領域は広がっています。
一方で、「コーチングとは何か」と問われると、
まだ少し分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
アドバイスを受けることなのか。
目標達成を管理してもらうことなのか。
悩みを聞いてもらうことなのか。
あるいは、モチベーションを高めてもらうことなのか。
そうした要素が含まれる場面もあります。
しかし、コーチングの本質は、単に助言を受けることでも、誰かに答えを教えてもらうことでもありません。
ICFジャパンでは、コーチングを、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントの可能性を公私において最大化するために、コーチとクライアントがパートナー関係を築くことだと説明しています。
この定義には、コーチングを理解するうえで大切な要素が詰まっています。
コーチングは、上下関係ではなくパートナー関係である
まず大切なのは、コーチングが「パートナー関係」であるということです。
コーチは、先生でも、上司でも、評論家でもありません。
クライアントを評価する立場でも、正解を一方的に渡す立場でもありません。
もちろん、専門的な知識や経験が必要になる場面はあります。
ただ、コーチングの中心にあるのは、上から教える関係ではなく、共に考え、共に探求していく関係です。
経営者であれば、日々多くの判断をしています。
管理職であれば、人と組織の間で複雑な調整を担っています。
専門職や個人事業主であれば、自分の判断がそのまま仕事や人生の方向性に影響していきます。
そうした立場にいる人ほど、誰かから一方的に答えを渡されることよりも、自分自身の考えを整理し、自分の判断で次の一歩を選ぶ時間が必要になることがあります。
コーチングは、そのためのパートナーシップです。
思考を刺激し続ける対話
ICFジャパンの定義には、「思考を刺激し続ける創造的なプロセス」という考え方があります。
これは、単に話を聞いてもらうだけではない、ということです。
問いを受ける。
言葉にしてみる。
自分の前提に気づく。
別の角度から見直す。
これまで見えていなかった選択肢に気づく。
そうした対話の積み重ねによって、思考は少しずつ動き始めます。
人は、自分のことを分かっているようで、意外と同じ見方を繰り返していることがあります。
いつもの前提。
いつもの判断基準。
いつもの我慢。
いつもの役割。
それらが悪いわけではありません。
ただ、その前提に気づかないまま考え続けていると、出てくる答えも似たものになりやすい。
コーチングでは、問いを通して、その人の思考が少しずつ柔らかくなっていく時間をつくります。
それは、無理に答えを変えることではありません。
自分の中にあった言葉や感覚に、もう一度触れていくことです。
創造的なプロセスとしてのコーチング
コーチングは、過去を整理するだけの時間ではありません。
これまでの経験を見つめ直しながら、これからの選択や行動を生み出していく時間でもあります。
何を大切にしてきたのか。
今、何に違和感を覚えているのか。
どの方向に進みたいのか。
どの資源を使えるのか。
誰とつながることで、次の展開が開けるのか。
こうした問いを扱いながら、未来に向けた具体的な一歩をつくっていきます。
その意味で、コーチングは創造的です。
まだ形になっていないものを、対話の中で少しずつ形にしていく。
頭の中にある断片を、言葉にして並べてみる。
大切にしてきたことと、これから取り組むことをつなげていく。
そこから、新しい行動や選択が生まれていきます。
可能性を公私において最大化する
ICFジャパンの定義には、「公私において」という考え方が含まれています。
これは、とても大切な表現だと思います。
人の可能性は、仕事だけで切り分けられるものではありません。
また、私生活だけで完結するものでもありません。
経営の判断には、その人の価値観が表れます。
キャリアの選択には、人生観が関わります。
組織での関わり方には、人間関係の癖や信念が出ます。
事業の方向性には、その人が社会に対して何を届けたいのかが反映されます。
だからこそ、コーチングでは、仕事だけを切り取るのではなく、その人全体を見ていきます。
過去の経験。
現在の役割。
未来の方向性。
価値観。
強み。
人との関係。
使える資源。
まだ言葉になっていない願い。
そうしたものを丁寧に扱うことで、その人が本来持っている可能性が、少しずつ現実の中で使えるものになっていきます。
ベルーフが考えるコーチング
ベルーフにとってのコーチングは、単なる目標達成の管理ではありません。
もちろん、目標を言葉にし、計画や戦略を見つめ、行動を振り返ることは大切です。
しかし、それだけではなく、その人が本来持っている優れたところを見失わずに、現実の中でどう生かしていくのかを共に見つめる時間でもあります。
何に反応しているのか。
なぜ、それを忘れられないのか。
どんな役割を果たしたいのか。
どんな人に届けたいのか。
今の仕事や事業の中で、どこから形にできるのか。
そうした問いを、対話の中で丁寧に扱っていきます。
コーチングとは、可能性を最大化するためのパートナーシップである。
その可能性とは、単に成果を増やすことだけではありません。
その人が本来持っている力や願いを、社会の中で意味ある形にしていくことでもあります。
最後に
コーチングは、答えを外から与えるものではありません。
その人の中にすでにあるものを、対話を通じて言葉にし、現実の行動へとつなげていく時間です。
自分の考えを整理したい。
次の方向性を見つめ直したい。
今の役割や事業の先にあるものを考えたい。
自分の可能性を、仕事や人生の中でよりよく生かしていきたい。
そう感じるとき、コーチングという対話は、一つの有効な選択肢になるのだと思います。
次回は、なぜ経営者や専門職に、専門家とは別の対話相手が必要になるのかについて、もう少し掘り下げていきます。
