コーチングというと、「目標を設定し、それに向かって行動するためのもの」と思われることがあります。

もちろん、目標を扱うことはあります。
行動を明確にすることもあります。
次の一歩を決めることもあります。

しかし、コーチングで扱うのは、目標だけではありません。

その人がどこから来て、いまどこにいて、これからどこへ向かおうとしているのか。

過去、現在、未来という時間軸を行き来しながら、その人の価値観や資源、関係性、可能性を見ていく時間でもあります。

過去には、すでに多くの資源がある

人は、これまでの歩みの中で多くの資源を積み重ねています。

経験。
学び。
失敗。
乗り越えてきたこと。
人との出会い。
続けてきたこと。
自然に身についた感覚。
人から信頼されてきた理由。

それらは、本人にとっては当たり前になっていることがあります。

長く続けてきたことほど、自分では特別に見えない。
自然にできてしまうことほど、価値として認識しにくい。
人から何度も相談されていることほど、「自分にとって普通のこと」として扱ってしまう。

しかし、そこにこそ、その人の資源があることがあります。

コーチングでは、過去を単なる振り返りとして扱うのではありません。

これまでの経験の中に、どのような価値観があったのか。
どのような場面で力を発揮してきたのか。
何を大切にして選択してきたのか。
どのような人に支えられ、どのような人を支えてきたのか。

そうしたことを見つめ直すことで、現在の判断に使える資源が見えてきます。

現在地を確認することが、判断を整える

過去を振り返るだけでは、現実は動きません。

いま、自分はどこにいるのか。
何に時間を使っているのか。
何にエネルギーを奪われているのか。
何に喜びを感じているのか。
どの関係性が力になっているのか。
どの関係性に無理が生じているのか。
どの仕事に納得感があり、どの仕事に違和感があるのか。

こうした現在地の確認は、とても大切です。

忙しいと、人は現在地を確認する前に、次の予定や課題へ進んでしまいます。

ただ、現在地が曖昧なまま走り続けると、努力しているのにどこかずれていくことがあります。

がんばっている。
結果も出ている。
評価もされている。
しかし、本当に向かいたい方向とは少し違う。

そういう状態は、経営者にも、管理職にも、個人事業主にも、専門職にも起こりえます。

コーチングでは、今の状態を丁寧に言葉にしていきます。

何が進んでいるのか。
何が止まっているのか。
何に違和感があるのか。
何を続けたいのか。
何を手放したいのか。

現在地が見えてくると、次の判断が少しずつ整っていきます。

未来は、いきなり決めるものではなく、言葉にしながら見
えてくる

未来について考えるとき、人はつい大きな目標を立てようとします。

売上をどうするか。
組織をどうするか。
キャリアをどうするか。
事業をどう伸ばすか。

もちろん、そうした問いは大切です。

ただ、未来は数字や計画だけで決まるものではありません。

どのような働き方をしたいのか。
どのような人と仕事をしたいのか。
何を社会に残したいのか。
どのような役割を果たしたいのか。
何に時間を使うと、自分の中に深い納得感があるのか。

こうした問いも、未来を考えるうえで欠かせません。

コーチングでは、未来を一方的に決めるのではなく、対話の中で少しずつ言葉にしていきます。

まだぼんやりしている願い。
説明しきれない違和感。
何年も消えない関心。
本当は向かいたい方向。

そうしたものを丁寧に扱いながら、未来の輪郭を見ていきます。

個人資源とソーシャルリソースを確認する

コーチングで大切にしたいものの一つに、資源の確認があります。

資源というと、お金や時間を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、それらも大切です。

ただ、ここでいう資源は、それだけではありません。

自分の経験。
専門性。
強み。
感性。
価値観。
人とのつながり。
信頼関係。
所属している場。
相談できる人。
協力してくれる人。
過去に積み重ねてきた信用。

こうしたものも、すべて資源です。

特に、ソーシャルリソースを確認することは重要です。

誰に相談できるのか。
誰と組むことができるのか。
誰に届けたいのか。
誰が応援してくれているのか。
どの場に身を置くと、自分の感覚が整うのか。

人は、一人で可能性を形にしていくわけではありません。

自分の内側にある資源と、周囲にある資源がつながることで、次の一歩が見えてくることがあります。

目標や計画は、クライアント自身の中から立ち上がる

コーチングでは、目標を扱います。

ただし、コーチが目標を決めるわけではありません。

クライアント自身が、自分の言葉で目標を見出していく。
その過程を、コーチは支えます。

計画や戦略についても同じです。

コーチが一方的に計画を作るのではありません。
クライアントが考えている計画や戦略を、同じ目線で見ていきます。

何を目指しているのか。
なぜ、それが大切なのか。
どこに無理があるのか。
どこに可能性があるのか。
どの順番で進めるとよいのか。
誰の協力が必要なのか。

そうした問いを通じて、計画や戦略は少しずつ現実的なものになっていきます。

大切なのは、クライアント自身が納得していることです。

人から与えられた目標は、続きにくいことがあります。
自分の価値観とつながっていない計画は、途中で力を失いやすい。

だからこそ、目標や計画は、その人自身の言葉から立ち上がる必要があります。

振り返りと承認が、次の行動を支える

コーチングでは、行動した後の振り返りも大切にします。

何を実行したのか。
何が進んだのか。
何がうまくいかなかったのか。
何に気づいたのか。
次に何を変えるのか。

この振り返りがあることで、行動は経験になります。

達成したことを確認することも大切です。

人は、自分が進んだことを見落としがちです。
できなかったことには目が向きやすい一方で、できたことや変化したことは、すぐに当た
り前になってしまうことがあります。

だからこそ、達成や変化を共に確認し、承認する時間が必要になります。

承認とは、ただ褒めることではありません。

何が変わったのか。
どんな選択をしたのか。
どのような力を使ったのか。
どこに成長があったのか。

それを丁寧に見ていくことです。

その確認があるからこそ、次の行動に向かう力が生まれます。

最後に

コーチングで扱うのは、目標だけではありません。

過去を振り返ること。
現在地を確認すること。
未来の方向性を言葉にすること。
価値観を見つめること。
個人資源を認知すること。
ソーシャルリソースを確認すること。
目標や計画を、本人の言葉で見出していくこと。
行動を振り返り、達成や変化を承認すること。

そうした対話の積み重ねによって、その人の可能性は少しずつ現実の中で形になっていき
ます。

そして、過去・現在・未来を丁寧に見つめていくと、単なる目標設定を超えて、ある問い
が立ち上がってくることがあります。

自分は、何を果たしたいのか。
何に反応し続けてきたのか。
どのような役割を、社会の中で担いたいのか。

そこに、使命というテーマが見えてくるのだと思います。

次回からは、その「使命」について書いていきます。